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97.私のハルマゲドン

教団の分裂と崩壊が進んでいくとき、私の内側にもこれまでにないようなことが起こった。
ある日、「識華」にいた頃ファミレスでよく会って話をしていたDから連絡があった。教団施設と離れて生活していたDは、マイトレーヤ正大師の方針が本当にグルを意識したものなのか、彼の権力欲によるものなのか判断しかねているようだった。
「正大師、どうなのかなぁ…。よく話してるんでしょう?」
烏山にいて正大師と話すことが多い私に、様子を聞きたいと言ってきたのだ。
あれから何年も経って、私もずいぶん変わった。今度は、よい法友としてDと話せるだろうと思って会ってみたが、その考えは甘かったことがすぐにわかった。Dは相変わらず教祖への帰依を熱く語り、話の最後には必ずこう言った。
「あなたには、愛も真理もなにもないわ」
「私からなにか気の利いた法則が盗めないかと思っているだけよ」
「いつもいいとこ取りのつまみ食いみたいな人生だわね」
面と向かって、グルに対する帰依もなく、真理も知らず、愛もないと言われると、しばらく忘れていたあの感覚――世界が侵食してきて呑み込まれてしまうような、ニューナルコの後の独特な感覚がよみがえってきた。そして、自分が暗い嵐のような狂気を抱えていたことを思い出した。
「あんなこと、もうまっぴらごめんだわ…」
過去世でよほど逆縁だったのかどうかは知らないが、私を混乱させるDとかかわるのは金輪際やめようと思った。部屋に暖房がないからと頼まれていた電気ストーブを届けに行ったら、それを最後にもう二度と会わないと決めた。Dの家の近くの駐車場で電気ストーブを手渡すときのことだった。
「なぜか、あなたの話には惹かれるけど、そこまで軽蔑されては…」
そう思いながら私が電気ストーブを差し出すと、それを手に取った瞬間、Dの顔はなにか非常におぞましいものを見たかのようにゆがんだ。
そして、手にした電気ストーブを駐車場のコンクリートに力いっぱいたたきつけた。

ガッシャーーン!

ひどい金属音がこだました。
私は静かに目を閉じた。
終わった、と思った。
そのとき、なぜか、世界が終わったのだ。
そして、ゆっくりと目を開けて上を見た。曇り空のなかに建ち並ぶビルはそのままだった。
「おかしいな…世界はたしかに今終わったのに、世界は続いているぞ…」
私は立ちすくんで終わったはずの世界を見渡した。見えている世界はいつもと変わらない。でも、もうひとつの、別の世界が終わったようだった。
これが私に起きたハルマゲドンだった。

それから、おかしなことが起こりはじめた。ある人と喫茶店で話をしていた。
「意識は自分と他人の区別をしているけど、自と他の区別をなくしていくと意識は広がっていく」
「そして、時間というのはあるように感じているけど、本当は時間なんてないんだよ…過去・現在・未来へと時間の流れがあるように意識は感じているけどね…」
いつものこんな話をしていると、途中から私を取り囲んでいる世界の様子が変わってくる。まわりで雑談をしている多くの人の存在感が急に増してくるようだった。他人として私と別に存在していた人々が、性別も年齢も違う人々が、突然自分とつながってしまうのだ。
「ここにいる人、みんな他人なのに、この人たちみんな私だ…」
とてもリアルにそれを感じる。まわりの人たちの話し声が遠のくと、入れ替わるように彼らの考えていることが意識を向けるとわかる。このときの空間は、密度が濃く、空気とは別のなにかで充たされているようだった。
この感覚が極まってくると、今度は私の胸(アナハタ・チャクラ)から、エネルギーがザァーッと世界に放出される。無尽蔵にあふれ出る圧倒的なエネルギーを感じながら、私は笑いだした。
「これが愛なんだ!」
これまで「愛ってなんだろう」「自分に愛がある」とか「愛がない」とか悩んでいたけれど、まったくナンセンスだった。愛は空気のようにこの空間に充ちていて、いつでもどこにでもあったのに! 
私は無量の愛を経験して嬉しくてしょうがなかった。
意識がこの状態に入ると、電話でだれかに質問しようと受話器に手をかける。その瞬間、質問の答えが心に浮かぶ。また、道を歩いていて向こうから二人連れが話しながら歩いてくる。すれ違うとき、彼らの会話の断片が耳に飛び込んでくる。言葉は独特な響きをもっていて、まるで「神の声」のように聞こえる。神の示唆のように聞こえる言葉が「右」だったら、それに従わなくてはならず、用もないのに右へ行くと何年も顔を見なかった信徒さんとばったり会うというようなことが起きた。

狂った人というのは、きっとこのような世界にいるのだろうと思う。私は本当に狂ってしまったか、新興宗教の教祖にでもなれるのでは? と思った。
ただし、これが続けばの話だが――。
その状態は、ほぼ一週間続いて消えた。



2015年10月18日

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コメント

No title

お~、面白いね。
修行をしてその状態を取り戻そうとは思わなかったの?
  • | 2015-10-19 | 元R師 URL [ 編集 ]

Re: No title

> 修行をしてその状態を取り戻そうとは思わなかったの?

この頃は、普通の生活でも、定期修行に入って座っていても、おかしなことが起こりましたよ。
  • | 2015-10-20 | 元TD URL [ 編集 ]

No title

いや、「一週間続いて消えた」後の事を聞いているんだけど。
  • | 2015-10-21 | 元R師 URL [ 編集 ]
      

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