地下鉄サリン事件の二日後、オウム真理教に対する全国一斉強制捜査は二五か所におよんだ(公証人役場事務長逮捕監禁致死事件容疑)。警視庁は自衛隊の協力も要請し、警察官と機動隊合わせて一六六〇人体勢で臨んだという。私が強制捜査当日「軍隊がやってきた」と感じたのも的外れではなかったようだ。
第六サティアンの強制捜査が終わると、私はすぐに青山道場に戻った。
交差点に面した五階建ての青山道場ビルは、機動隊が二十四時間監視・警護にあたり、包囲線の外側は報道陣のカメラで何重にも取り囲まれていた。
青山では通常の道場活動をすることができなくなり、ロシア支部から急遽帰国したマイトレーヤ正大師(上祐史浩氏)をトップとする緊急対策本部が置かれマスコミ対応の場となった。私は緊急対策本部のワークをすることになり青山道場に残った。
それから、多くの法友が次々と逮捕・勾留・起訴されるという異常な日常がはじまった。
私のまわりでは東信徒庁大臣のサクラー正悟師が最初だった。
仮谷さんの妹さんを担当していたサクラー正悟師は、仮谷さん拉致事件の容疑で逮捕されることを覚悟して身辺整理をしていた。
「これは大切なものだから、あなたに保管をお願いするわ。それ以外の物は処分してかまわないから」
そう言って、教祖から贈られた座具(瞑想するときの敷物)と、タンカ(チベット密教の宗教画)と、修行用の竹刀、そしておびただしい数の教祖の説法テープを詰めた段ボール箱を私に託した。
サマナも師も、正悟師も、正大師ですら逮捕されていった。ほとんどの信徒とサマナにとって、あらゆることが青天の霹靂のような事態だった。解脱と救済のために修行をしていたはずなのに多くの修行者が逮捕されていった。なにが起こっているかまだよくわかっていなかった私は、連行される仲間の姿を極厳修行に入る修行者を見るような気持ちで見送った。取り調べに対して黙秘することは「沈黙の行」という修行、取調官の厳しい尋問は「カルマ落とし」で、それに耐えることが逮捕された修行者の課題だと思っていた。
ほどなくして、治療省大臣だったクリシュナナンダ師(林郁夫受刑囚)が「地下鉄にサリンをまきました」と自白したと報道された。
このときもし、修行仲間が無差別殺人を犯したことと、自白したことのどちらがショックだったかと問われたら、私は「自白」と答えたかもしれない。教団がテロを実行したことはそれくらい現実味がなかった。それに対して、逮捕された修行者が自白することは明らかに修行の断念であり信仰を捨てることだ。
クリシュナナンダ師ほどの修行者が、逮捕から日もたたないうちに自白することがあるだろうか? 有能な心臓外科医の地位と名誉を捨てて、すべての財産を布施して出家した彼ほどの修行者が簡単に修行を放棄するなんて、報道はなにかの間違いか他の容疑者を動揺させるためのデマではないかと疑った。
第六サティアンの強制捜査が終わると、私はすぐに青山道場に戻った。
交差点に面した五階建ての青山道場ビルは、機動隊が二十四時間監視・警護にあたり、包囲線の外側は報道陣のカメラで何重にも取り囲まれていた。
青山では通常の道場活動をすることができなくなり、ロシア支部から急遽帰国したマイトレーヤ正大師(上祐史浩氏)をトップとする緊急対策本部が置かれマスコミ対応の場となった。私は緊急対策本部のワークをすることになり青山道場に残った。
それから、多くの法友が次々と逮捕・勾留・起訴されるという異常な日常がはじまった。
私のまわりでは東信徒庁大臣のサクラー正悟師が最初だった。
仮谷さんの妹さんを担当していたサクラー正悟師は、仮谷さん拉致事件の容疑で逮捕されることを覚悟して身辺整理をしていた。
「これは大切なものだから、あなたに保管をお願いするわ。それ以外の物は処分してかまわないから」
そう言って、教祖から贈られた座具(瞑想するときの敷物)と、タンカ(チベット密教の宗教画)と、修行用の竹刀、そしておびただしい数の教祖の説法テープを詰めた段ボール箱を私に託した。
サマナも師も、正悟師も、正大師ですら逮捕されていった。ほとんどの信徒とサマナにとって、あらゆることが青天の霹靂のような事態だった。解脱と救済のために修行をしていたはずなのに多くの修行者が逮捕されていった。なにが起こっているかまだよくわかっていなかった私は、連行される仲間の姿を極厳修行に入る修行者を見るような気持ちで見送った。取り調べに対して黙秘することは「沈黙の行」という修行、取調官の厳しい尋問は「カルマ落とし」で、それに耐えることが逮捕された修行者の課題だと思っていた。
ほどなくして、治療省大臣だったクリシュナナンダ師(林郁夫受刑囚)が「地下鉄にサリンをまきました」と自白したと報道された。
このときもし、修行仲間が無差別殺人を犯したことと、自白したことのどちらがショックだったかと問われたら、私は「自白」と答えたかもしれない。教団がテロを実行したことはそれくらい現実味がなかった。それに対して、逮捕された修行者が自白することは明らかに修行の断念であり信仰を捨てることだ。
クリシュナナンダ師ほどの修行者が、逮捕から日もたたないうちに自白することがあるだろうか? 有能な心臓外科医の地位と名誉を捨てて、すべての財産を布施して出家した彼ほどの修行者が簡単に修行を放棄するなんて、報道はなにかの間違いか他の容疑者を動揺させるためのデマではないかと疑った。
2015年09月06日
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コメント
Re: No title
> クリシュナナンダの自白は、やっぱりなって感じだったけどね。
もうお分かりだと思いますが、私のものの見方は現世的・世間的でしたからね。
学歴の良さや育ちの良さが修行者の素質と関係あると思っていたようです。
今は全然思いませんが。
もうお分かりだと思いますが、私のものの見方は現世的・世間的でしたからね。
学歴の良さや育ちの良さが修行者の素質と関係あると思っていたようです。
今は全然思いませんが。
- | 2015-09-07 | 元TD URL [ 編集 ]
Re: No title
> 学歴の良さや育ちの良さは麻原とは真逆だけど、そこはどう考えていたの?
当時、教祖の出自なんて私は知りませんでしたよ。みんなそうなんじゃないかな、ちがう?
当時、教祖の出自なんて私は知りませんでしたよ。みんなそうなんじゃないかな、ちがう?
- | 2015-09-09 | 元TD URL [ 編集 ]
No title
違う人もいれば、そうでない人もいるんだろうねえ。
少なくとも、麻原は高学歴でもなければ医者でも弁護士でもないことは分かっていたと思うけど、その点はどうなの?
少なくとも、麻原は高学歴でもなければ医者でも弁護士でもないことは分かっていたと思うけど、その点はどうなの?
Re: No title
> 少なくとも、麻原は高学歴でもなければ医者でも弁護士でもないことは分かっていたと思うけど、その点はどうなの?
高学歴な医師や弁護士が、それを捨てて弟子入りするのだから、それ以上のものを教祖は持っていると単純に(自然に)思うものではないでしょうか。ですから、それはあまり問題になりませんでしたよね。
高学歴な医師や弁護士が、それを捨てて弟子入りするのだから、それ以上のものを教祖は持っていると単純に(自然に)思うものではないでしょうか。ですから、それはあまり問題になりませんでしたよね。
- | 2015-09-10 | 元TD URL [ 編集 ]
No title
いや、そうじゃなくて、なぜクリシュナナンダがステージが高いと思っていたのかを聞いているんだけどね。
最初からクリシュナナンダの事しか聞いてないよ。
ダブルスタンダードだったって事?
最初からクリシュナナンダの事しか聞いてないよ。
ダブルスタンダードだったって事?
Re: No title
> いや、そうじゃなくて、なぜクリシュナナンダがステージが高いと思っていたのかを聞いているんだけどね。
林郁夫さんの功徳のあらわれ(地位・名誉・才能)に目がくらんでそう思っていたのでしょうね。
教祖に対する信が弱い理由もそこらへんにあったかもしれません。
林郁夫さんの功徳のあらわれ(地位・名誉・才能)に目がくらんでそう思っていたのでしょうね。
教祖に対する信が弱い理由もそこらへんにあったかもしれません。
- | 2015-09-12 | 元TD URL [ 編集 ]
No title
教義に対する基本的な理解が曖昧に思えるね。
最高の功徳のあらわれは修行者としての資質(つまり麻原)なんだけど、地位・名誉・才能(つまりクリシュナナンダ)と比較してどういう位置づけだったの?
最高の功徳のあらわれは修行者としての資質(つまり麻原)なんだけど、地位・名誉・才能(つまりクリシュナナンダ)と比較してどういう位置づけだったの?
Re: No title
> 教義に対する基本的な理解が曖昧に思えるね。
そうなんですよ。目がくらんだというのはそういうことです。
それでつまずいたりころんだりして何とか理解したというところです。
そうなんですよ。目がくらんだというのはそういうことです。
それでつまずいたりころんだりして何とか理解したというところです。
- | 2015-09-13 | 元TD URL [ 編集 ]
No title
5月16日の逮捕までは、わたしも強制捜査は国家による陰謀だと思っていました。テレビも見ないし、以前の国土法事件がちょっとひどくなった程度だと思っていました。
教団を離れて逃亡していた人たちの「エネルギー状態が悪くなっているから修行できるように戻してくれ」と言われました。
他の投稿にある「透明なエネルギー」というのを以前も無意識に感じていて、今でも記憶があるので、多くの人が昔の教団の生活に否定的になれないのだろうと思います。
教団を離れて逃亡していた人たちの「エネルギー状態が悪くなっているから修行できるように戻してくれ」と言われました。
他の投稿にある「透明なエネルギー」というのを以前も無意識に感じていて、今でも記憶があるので、多くの人が昔の教団の生活に否定的になれないのだろうと思います。
- | 2017-05-15 | 和合萬年 URL [ 編集 ]
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