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69.煩悩の布施

入会してまだ一か月ほどの友人が、なにもわからないまま一千万円の布施をする。それは彼女のためにならないと私は思った。アーナンダ師の力に影響されて、布施の意味を理解しないで布施をしても、たしかに彼女の功徳になる。それに持っている財産を放棄できたなら、彼女の心は手離した分だけ軽くなり解放されるというのが法則だった。しかし、私は、法則を学んで布施の素晴らしさを理解してから、イニシエーションを受けてほしかった。でも、私は支部活動をしている師なのだ。アーナンダ師の勧めにしたがって大きな布施をしようとする友人に、「ちょっと待って」と水を差すなんて、あり得ないことだった…。
考えた末、私はこれまで一度もしたことのないこと――教祖に直接電話をすることにした。

「尊師、Mさんは法則もなにもまだまったく理解していません。このままアーナンダ師に対する狂ったような執着で大きなお布施をしても、その後が続かないと思います。私が責任をもって法則を理解させて修行させますから、もう少し土台を作ってからパーフェクトの一千万コースに入れたいのです」
このような意味のことを電話で話したと思う。
教祖は私の話を最後まで聞いてから、いつもの落ち着いた口調でこう言った。
「どちらにしても煩悩で布施をするんだろう? だったら同じことじゃないか」
ふいをくらって、私は「うっ」と黙った。
電話の向こうで教祖は同じことを繰り返した。
「どちらにしても煩悩の布施じゃないのか? どうだ」
私は「はい」としか答えられず、電話を切った。

「どちらにしても煩悩の布施」という言葉を聞いて、教祖にとっての「布施」と、私が考えている「布施」はまったく違うものだということに改めて気づかされた。アーナンダ師の歓心を買うためにする布施も、法則を理解して功徳を積むためにする布施も、結局は自分の利益のためにする布施なのだ。しかし、教祖が説いている布施の真髄は、まったく見返りを期待しない純粋な供養のことだ。もちろん教えとして理解してはいたが、私はどこかで「功徳」という見返りを期待して布施や奉仕をしていなかっただろうか?
まもなく友人はアーナンダ師に勧められるまま一千万円を布施した。そして、特別な信徒として富士の第一サティアンのシールドルームでパーフェクトを受けた。
私は、イニシエーションを受けている彼女の様子を一度だけ見に行った。修行歴のまったくない初心者が、密室で電極のついた帽子をかぶって過ごすのはつらいことだったと思う。不安そうな様子で彼女は言った。
「来るって言ったのに。見に来るって言ったのに、アーナンダ師、ぜんぜん来ないんだよ…」
私は動揺を隠せない友人の目を見ながら、「彼は、けっしてここには来ないよ」と心の中でつぶやいていた。
こうして書いてはじめて気づいたことがある。
アーナンダ師が来ないと不安を訴えた彼女に、私は法則の素晴らしさや修行の意味も話さなかった。あのときは彼女に話しても無駄だと思ったのかもしれない。いや、自分の友人の大きなお布施をアーナンダ師にとられたことを、どこかで悔しく思っていたのだろうか。
友人に対して責任を感じていて、しっかりと土台を作ってから大きな布施をしてもらいたいという思いを、私は今の今まで疑わなかった。しかし、もしかしたら、友人が私ではなくアーナンダ師に依存したときから、私は冷ややかな目で友人を見ていたのかもしれない。
アーナンダ師を冷酷だという資格が、いったい私のどこにあるというのだろうか…。


2015年07月24日

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コメント

No title

まさにタントラヴァジラヤーナ。
煩悩を使った救済だね。(笑)
  • | 2015-07-25 | 元R師 URL [ 編集 ]

強力な磁場

中学の頃に湘南ゼミナールという自己啓発セミナーみたいな塾に通ってたんですけど、とにかくそこは信者の扱いが険しい。うからない学校でも10人受けて一人受かる成績なら、うけさせる。良くも悪くもカルマに強烈な影響が出るため、その後の人生に影響が出ます。他支部の人でも何か縁を感じたりするのがあります。ばったり町であったりとか。もともともってる人間の形を修行で変えてしまうと、何か後で反動が来る気がします。
  • | 2015-07-29 | 三橋 URL [ 編集 ]

最高の戦略家

最高の戦略家は自分を攻撃させる。
人類史上最高の戦略家はイエスキリストである。
  • | 2015-07-29 | 三橋 URL [ 編集 ]
      

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