48.クンダリニー・ヨーガ成就修行

上九(山梨県旧上九一色村)にある第二サティアンの二階道場で、クンダリニー・ヨーガの成就を目指す極厳修行がはじまることになった。オウムの出家修行者――生活班のおばさんも科学班の一流大学卒の青年も建築班のおじさんもAHI(オウム真理教附属医院)の看護師さんも、老若男女問わずサマナ全員が目指してしているのは「解脱・悟り」であり、そのためには極厳修行に入ってクンダリニー・ヨーガを成就しなければならない。
「四十人、極厳修行に入れるんだってさ」
「だれが入るのかなあ…」
ひさびさに行われる極厳修行ということもあって、スワミ以下のサマナは、いったいだれがメンバーに選ばれるのか、もしかしたら自分も…と期待しながら発表を待っていた。
この頃おそらく八百人近いサマナがいたはずだから、四十人のなかに選ばれる確率はかなり低い。日々どのように過ごしているかが選ばれる基準で、ワークに集中していること、教学システムを進めていること、戒律を守っていることなど、日常的にサマナ生活の規律を守ることのできる意思の強さがなければ、長期の極厳修行に耐えられるはずもなかった。ゆれてばかりいた私は、普通ならば選ばれなかっただろうが、大きな事故によってカルマが落ちて修行に入るタイミングだと思われたのか四十人のメンバーに選ばれた。

一九九一年十二月十三日、第二サティアンの二階に集まった四十人の修行者(二十代から五十代までの男女)を前にして教祖は言った。
「今回の修行では、アーナンダタイプで、煩悩捨断できる成就者をつくる」
これはアーナンダ師(井上嘉浩死刑囚)のように神秘力、神通を持っているだけでなく、かつ煩悩に負けない成就者を誕生させるという意味だ。教祖はこの極厳修行でより質の高い成就者を作ろうとしたのだと思う。それまでは修行中にするクンダリニー・ヨーガの霊的体験を教祖が判定して成就を認定していたが、今回は霊的体験と教祖の判定のほかにもたくさんの加行を達成しなければならなかった。オウムの四つの秘儀瞑想(詞章やイメージを使った瞑想体系)をそれぞれ千回ずつ、特別教学システム十課まで、立位礼拝六百時間を終わらせて、最後に四日間のアンダーグラウンド・サマディ(地中に埋められた小部屋での瞑想)を経験しなければ成就と認定されない。
修行内容は秘儀瞑想が中心で、秘儀瞑想のテキストを声に出して唱え、「究竟(きゅうきょう)の瞑想」によって弛緩(リラックス)する。この「集中」と「弛緩」の繰り返しのなかで、主に究竟の瞑想中に「体験」は起きる。クンダリニー・ヨーガの成就には「四つの体験」が必要だとされていた。
「四つの体験」とは、
1.「ダルドリー・シッディ」(身体が勝手に飛び上がる状態・空中浮揚の前段階)
2.「変化身の体験」(夢の身体である変化身が身体から抜け出していろいろな世界を経験し、また身体に戻ってくるというプロセスをすべて認識できること)
3.「光への没入」(内的な光に意識が没入する体験)
4.「意識の連続」(眠らない鮮明な意識状態が連続して続くこと)

一か月に一度くらい体験を書いて提出するように言われて、教祖がその内容と修行者の状態を見て判定する。「四つの体験」について、「自己申告なら体験したと嘘をつくかもしれない」と疑うかもしれないが、サマナは不妄語(嘘をつかない)という戒律を守っているので嘘をつくことは考えにくいし、嘘や誤魔化しで乗り切れるほど長期に渡る極厳修行は甘いものではなかった。
また、教祖は解脱を証明するために、「アンダーグラウンド・サマディ」で修行者の酸素消費量を測定させた。瞑想状態がサマディの段階に近づいてくると、煩悩が静まって呼吸の回数が減るか、もしくは呼吸停止が起きる。地中に埋めたステンレス製の完全密閉された小部屋で、修行者の酸素消費量が少なくなっていることを解脱の科学的証明だと考えていたのだ。
このように成就の指針は明らかだった。極厳修行が行われた道場のすぐ上には教祖の瞑想室があって、教祖はしばしばやって来ては修行者の疑問に答え、アドバイスをし、短い説法をして修行者を励まし導いてくれた。
そして、生活の場とはまったく異質な、精妙なエネルギーに満ちた空間で極厳修行がはじまると、驚くほどのスピードで瞑想体験がはじまった。

<極厳修行の一日のスケジュール>
0:00~2:00 秘儀瞑想(1)
2:00~3:00 究竟の瞑想(意識を保ちながらリラックスする。瞑想中は室内の電気は消される)
3:00~4:00 秘儀瞑想
4:00~6:00 経行(きんひん)(詞章を唱えながら早足で歩く)(2)
6:00~8:00 呼吸法(ヴァヤヴィヤ・クンバカ・プラーナーヤーマ)(3)
8:00~10:00 秘儀瞑想
10:00~11:00 究竟の瞑想
11:00~12:00 供養(食事。できるだけ小食か、できる人は断食)。しない人は秘儀瞑想。
12:00~14:00 秘儀瞑想
14:00~16:00 呼吸法
16:00~18:00 経行
18:00~19:00 究竟の瞑想
19:00~22:00 秘儀瞑想
22:00~24:00 呼吸法

(1)秘儀瞑想とは「小乗のツァンダリー」「グルヨーガ・マイトレーヤ・イニシエーション」「大乗のツァンダリー」「グル・ヨーガ」の四つ。
(2)経行は第一上九から第二上九までを早足で往復する。
(3)ヴァヤヴィヤ・クンバカ・プラーナーヤーマは、激しい入出息の繰り返しと保息をする呼吸法の一種。
※経行以外はすべて蓮華座を組んで行う(究境も同じ)。もちろん睡眠時間はない。


2015年04月29日

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