31.浄化

修行をはじめると「火と水の洗礼」と呼ばれる浄化が起きた。
「火の洗礼」は体温が四十度近くにまで上がり、「水の洗礼」は突然ガタガタ震えるほど寒さを感じるもので、どちらも風邪の症状に似ているが、急な体温の上昇と悪寒以外には鼻水が出たり咳が出たりという症状はない。信徒の間では、三九度、四〇度の熱が出たという話は珍しくなかった。
「高熱なんだけど意識ははっきりしているんだよね」
「熱が三九度あってもぜんぜん辛くなかった」
病気の発熱とは少し様子が違っていて、薬を飲まずに耐えていれば浄化は終わり、身体はよりエネルギッシュになった。

また、「足腐れ病」と言われていた浄化もあった。信徒にも起きていたが、サマナのは驚くようなものだった。最初は足のどこかにポツリと小さなできものができて、そこが膿をもって腐ったようになる。耐えられないほどの激痛を伴ったり、腫れあがって、あっというまに何か所にも広がることもあった。人によっては足先からかかと、ふくらはぎと太ももにかけて足全体に症状が出て、まれに松葉杖を使わないと歩けないほどひどい人もいた。足のどこかに膿がたまるのは「地獄(嫌悪)のカルマ」だと言われていた。
同じようなものが腕に出る人や、喉が腫れてソフトボールほどの大きさの膿の固まりが首にできた人もいた。腕と喉は「阿修羅(闘争)のカルマ」だと言われた。
富士道場には、このように身体の一部が腫れたり腐ったようになる人が、あっちにもこっちにもいて、みんなそれを隠すこともなく、見る方も「すごい浄化だねえ」と気の毒に思う一方で、悪いカルマが身体にあらわれて落ちていることを一緒に喜んだ。
私に起きた浄化は、軽い「足腐れ病」と汚れた痰や洟が出続けるという程度だった。あるとき鼻をかむと、奥の方からズルっと緑色の膿のようなものがひとかたまり出てきた。
「こんなに汚い緑色のものが身体の中から出てくるものかあ…?」
濁った緑色のスライム状の膿をあっけにとられて見た。

たくさんの人が経験した浄化について、オウムの施設が不潔だからばい菌による集団感染だった、と考えるのが普通だろう。それは否定できない。しかし、「修行をすると、浄化が起きてこんな症状が出ますよ」と教えられ、病気でもないのに高熱が出たり、膿が溜まって腫れたりすることは、オウムの修行を信じる根拠になった。激しい症状が出ても、やがてきれいに治ってしまったから、私たちは修行による浄化だと信じていた。サマナの間で浄化の話になると、どれほどすごい症状でたいへんだったか、嬉々としてわれもわれもと体験を話し盛り上がった。


2015年03月27日

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