22.救済物語

「救済」という言葉は私にはあまりぴんとこなかった。でも、この一言に魅力を感じていた人はかなりいたと思う。
「尊師の救済活動が成功するように、お手伝いしたい…」
「やっぱり救済しかないんですよ」
「地球を救済する使命があると思う」
だれかが「救済」と言うとき、輝くような喜びの表情がうかがえた。
「煩悩にまみれて低い世界へ落ちていく魂を救いたい」というのはまだわかる。だが、「三万人の解脱者を出すことによって第三次世界大戦を阻止する」「一九九九年のハルマゲドンを回避する」となると、救済はロマンチックな世紀末物語のようだった。
「私にはちょっとついていけないなあ。もっと修行が進めば救済もわかるのかなあ…」
修行者タイプだった私はそう思っていた。

オウムが新興宗教団体として拡大する少し前、教祖はエジプトを訪ねた。ピラミッドを生んだ古代エジプト文明についてこんな趣旨のことを書いている。
「古代エジプト文明は高い精神性をもっていた。霊的に覚醒した人びとのクンダリニー文明といってもいい。古代アトランティス文明が一夜にして海底に沈んだときに、脱出して生き残った人たちがつくったものだ」
その後、マイトレーヤ正悟師(上祐史浩)を中心に、アトランティスの存在を証明しようという試みがなされたこともあった。ステージの高い修行者が見たヴィジョンに、高度な文明が崩壊し水没する様子や、潜水艇で海の中を逃げたというものがいくつもあり、それぞれのヴィジョンを比較・検証しようとしたのだ。
「この人、本気で証明できると考えているんだ…」
マイトレーヤ正悟師の高い知性にあこがれていた私はびっくりした。
繁栄した古代文明が一夜にして滅んだというのは、どこか人の心をとらえるのだろう。
「今ここに集っている弟子たちは、はるか昔アトランティスの時代から、古代エジプト、さまざまな歴史と文明のなかで、尊師と一緒に輪廻転生を繰り返して救済活動をしている約束された魂なんだ」
こんな物語を信じて心を熱くしていた人はけっこういたと思う。
『幻魔大戦』『宇宙戦艦ヤマト』『風の谷のナウシカ』その他多くのマンガやアニメを見て育った世代にとって、救済の物語は身近なものだったのかもしれない。


2015年03月15日

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  • | 2015-08-19 |   [ 編集 ]
      

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