早川紀代秀死刑囚の文章①

死刑や無期懲役の判決を受けた弟子たちは、日々どんなことを考えて過ごしているのでしょう。不自由ではあるでしょうが、考えていることは私とあまり変わらないのではないかと想像しているのですが、死刑が確定すると、数人の決められた人としか面会や手紙の交流ができなくなり、死刑囚の今の思いはなかなか伝わってきません。
最近では、中川智正死刑囚が化学専門雑誌に文章を発表していました(『現代化学』(2016年11月号)「当事者が初めて明かすサリン事件の一つの真相」)。私信のやり取りはできなくても、このように不特定多数に向けて書いたものを公表することはできるので、今回は、早川紀代秀死刑囚が書いた「『オウムはなぜ消滅しないのか』を読んで」という文章を何回かに分けて掲載します。(了承してくださった早川さん、ありがとうございます。)

「『オウムはなぜ消滅しないのか』を読んで」と題されたノート34ページ分の文章は、本全体の感想、本のなかで早川さんについて書かれた部分の補足修正、早川さんの印象に残ったテーマについて考察した部分の大きく三つに分かれています。具体的には以下になります。

1.本全体の感想
2.私に関する事件についての補足修正、他
3.後期インド密教の殺人を容認する個所は誤りということについて
4.密教は、煩悩がなくならないということに着目して生まれたという見解について
5.ブッダシャカムニでさえ煩悩がなくなってはいなかったというご指摘について
6.最終解脱者と自称していたことについて

今回は「1.本全体の感想」の部分を掲載します。


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『オウムはなぜ消滅しないのか』(中島尚志)を読んで
早川紀代秀

パラパラと見ると、私のことが書かれている個所があったので、まずそこを読みました。良く書いていただいていたのでホッとしました。(笑)
最初から読み始めて二日ほどで読み終わりました。この手の本(事件を扱った本ということ)で、こんなに早く最後まで読めたのは初めてでした。
元判事で林泰男の弁護人となられた方で、宗教にも詳しい方だけあって、とんでもない邪推や誤解、ピントはずれな見方もなく、事実をきちんと押さえて書かれているという感じがしました。林郁夫についても同感で、あれは法の下での平等を堂々と無視したものです。

ただ、私に関する事件等では、間違いというほどのことではありませんが、少し気になる個所が数か所あったので、それについては後述します。

一読して一番印象に残ったことは、出家制度の意義についてでした。
オウムが、追いつめられ、過激化していった大きな要因に、この出家制度に対する当時「被害者の会」と名のっていた人達とのあつれきがあったと私は思いますが、私達が起こした事件が、あまりにもひどいものであったためでしょう、オウムの事件の出発点とも言うべきこの出家制度への妨害、理解のなさについてや、出家制度の意義についての注目は、まったくといっていいほどありませんでした。
この点を私は、ひどく残念に思っていましたが、自分達がしたことを考えると、「やむをえないのかなあ」と思って、あきらめていました。
でもここに、オウムの出家制度についての意義を明確にし説明しておられる本にめぐり会えて、本当にうれしく思います。
本の題名への解答が、ここにあることを著者は示しておられますが、私もその点同感です。
現在もオウム真理教の後継団体として、「アレフ」や「ひかりの輪」が、なにかと特別視され、危険視されていますが、これらの団体は、「殺人を容認しているわけではない」と、事件を起こしたオウム真理教との違いを明記されている点も我が意を得た思いです。
これらの団体の構成員は、実際、上祐を別にして、教団が殺人にかかわったり、容認していたことを、まったく知らなかった人達で、自分達が教えられていた内容とは正反対のことをグルが指示し、弟子達が実行したことを、いまだに信じられない思いでいることでしょう。
彼らにとっては、自分達になにもやましいところはなく、純粋な気持ちで修行をしていただけなのに、なにゆえ世間から差別され、嫌われなければならないのか、理解しがたいところだろうと思います。こうした社会の無理解や圧力、いやがらせは、結局のところ、彼らの信仰に力を与え、世間の思惑とは裏腹に、教団の存続を確かなものにしていくものと思われます。

その他印象に残ったものとしては、「秘密集会タントラ」(グヤサマジャ・タントラ)の殺人を肯定する内容の考察からのこのタントラの否定、密教は、煩悩はなくならないということから生まれたものという見解、ブッダシャカムニにも煩悩はあったのではないかという指摘、グル麻原が最終解脱者であると自称したことに対する批判、等があり、いずれも興味深いテーマであり、ぜひ私なりに検討してみようと思いました。
簡単に結論が出るようなことではありませんが、一応の検討結果を後に書いておきます。
私にとっては、中島先生のご著書によって、オウム事件や教団のことのみならず、仏教についても、改めて考えさせられ、最近にない興奮を感じることができ、よかったです。

<「2.私に関する事件についての補足修正、他」に続く>


2017年05月18日

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  • | 2017-05-20 |   [ 編集 ]
      

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