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啓示、そして破滅

山岸凉子さんの『レベレーション(啓示)』(講談社モーニング KC)を読んで、「神の啓示」が人にどんな影響をおよぼすものなのか、あらためて考えさせられました。
ジャンヌ・ダルクを主人公にしたこのマンガは、まだ連載中で完結していませんが、1巻・2巻を読むかぎり、神の姿を見、神の言葉を聴き、神の啓示にしたがった人間の運命がテーマのようです。山岸凉子さんが描くジャンヌ・ダルクは、「神秘体験」に突き動かされて進んでいきますが、このあたりどの程度史実に即しているのか、少し興味を持って調べてみました。
ジャンヌ・ダルクの研究は歴史学者や神学者によるものだけでなく、ジャンヌ・ダルクが経験したとされる神秘体験(神々のヴィジョンと神からの声)について精神医学分野のものもあるようです。山岸凉子さんはそのような資料に基づいて「神秘体験」を正面にすえてジャンヌ・ダルクの生涯を描こうとしています。
15世紀のフランス、農夫の娘ジャンヌ・ダルクは、神の声に導かれて困難な戦いに勝利していきますが、最後は捕虜となり「魔女」「異端」であるとして火あぶりの刑に処せられました。ジャンヌに啓示を与えた神は、敬虔な乙女に奇跡のような栄光を与えながら、まるで“生贄(いけにえ)”を欲しているかのように破滅へと導いていきます。
清らかな心で神の啓示にしたがった人間がなぜ破滅に導かれるのか? 大きな矛盾をはらむ受け入れがたい結末ですが、この現実をありのままに受けとめるなら、神の啓示のままに進んでいったからこそ、最後に手ひどく神に裏切られるという「反転・パラドックス」の運命が待っていた…ということではないでしょうか。神の子イエス・キリストの運命にも同じようなパターンがみられます。私は、オウムの研究も踏まえて、神につながる「霊性」を突き詰めたところにあらわれる、これは一つの真実なのかもしれないと思いました。

このブログで「オウム事件に不可解さが残っているとしたら、霊的な問題がわからないからではないでしょうか」と書いたことがあります(1)。
裁判ではもちろん、オウムについて書かれた本のなかでも、教祖が「シヴァ神」の示唆にしたがっていたことは問題にされませんでした。弟子の神秘体験については信仰の動機としてふれられることはありましたが、教団の中心にいた教祖の神秘体験についてはほとんど顧みられることはありませんでした。
しかし、弟子たちが教祖の指示に無条件にしたがっていたように、教祖は神の姿を見、神の声を聴き、その示唆にしたがって教団の進む道を決めていました。教祖のそばにいた者なら――教祖の家族であれ教祖を批判するようになった弟子であれ、教祖が教祖の神とひんぱんに交感していたことを否定する人はいないでしょう。
富士山麓に総本部道場を建立することを決めたのも「富士山が爆発する。噴火を鎮めるために富士に道場を建てろ」というシヴァ神の示唆があってのことでしたし、修行中の信徒が過失で亡くなったとき、教祖はその事故を「ヴァジラヤーナに入れというシヴァ神の示唆だ」ととらえたといわれています(早川死刑囚著書)。日々休むことなく神々を供養していた教祖は、「今朝、シヴァ神から示唆があって…」と言って説法をはじめたこともありました。こんな例は枚挙にいとまがありません。教祖がシヴァ神という目に見えない存在から大きな影響を受けて教団のすべてを動かしていたことは、あらためて言うまでもないほど、オウムでは日常的なことでした。

現代では、神の姿を見る人もなく、神の声を聴く人もなく、「啓示」は「妄想」だとされ、たとえ神が語りかけたとしても、耳を傾けるのは精神病院にいる人たちくらいなのかもしれません。私は「啓示」なのか「妄想」なのか、あるいは「神は存在する」か「存在しないか」という議論をするつもりはありませんが、人は神の姿(ヴィジョン)を見るということがあり、神の声を聴くということがあり、そのような体験をした人は神の「啓示」だと直感して、はかり知れない影響を受けることを、オウムという体験を通じて学びました。
事件から長い時間がたって、霊性に関するこのような重く深い教訓が少し理解されるようになるかもしれません。『レベレーション(啓示)』を読んで、そんなことを思いました。

(1)「雑考01.神秘体験について
関連記事はこちら↓
黙示録の神とキリスト

【注意】マンガは完結していないので読まなくていいですよ…。


2017年03月29日

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  • | 2017-04-10 |   [ 編集 ]
      

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