教育勅語と銃剣道

同じオウム脱会者の元M師からメッセージが届きました。郷里に戻って普通に仕事をして生活している元M師とは、もう何年も会っていません。オウムのことで記憶が曖昧なときにSMSを使って確認する程度のつき合いです。

元M師「お久しぶりです! たしか上祐さんが出所後、オウムと大日本帝国の類似について講義していたよね? 昨日、教育勅語の教材使用の閣議決定。中学体育の選択科目に銃剣道とか。共謀罪も…」
元TD「こんにちは。大日本帝国とオウムのシンクロニシティについては、昔も今も言っているんじゃないかな。上祐さんの本にはたいてい出てくるからね」
元M師「自民党の背景には日本会議。その思想は生長の家の総裁原理主義。今回の軍国主義化に対して谷口雅春の文章が紹介されていて驚いたわ」

「戦争に於ては、否応はない、言葉通り肉体の生命が放棄せられる。そして軍隊の命令者は、天皇であつて、肉体の放棄と共に天皇の大御命令に帰一するのである。肉体の無と、大生命への帰一とが同時に完全融合して行はれるところの最高の宗教的行事が戦争なのである」(1)(谷口雅春)*新宗教「生長の家」創始者・初代総裁

元TD「オウムの“グルとの合一”や“ヴァジラヤーナ”と同じような考えだねえ…最高の宗教行事が戦争ですか…」
元M師「そうなんや。オウムはこういう日本人の心理のあらわれやねぇ」
元TD「オウムほど修行して潜在意識に深く潜っていった団体はないからね。めちゃくちゃ激しい修行をして、個人の井戸を深く深く掘っていったら、行きついた先は日本人の集合的な無意識だった…という」
元M師「これはかなり問題やね。オウムの個人個人の集合意識とは考えていたけど、日本人の集合無意識とは考えてなかったわ。今頃気がつくとは(泣)」
元TD「今や日本全体がオウム化した? オウムの意味不明な事件を、きちんと分析して解明する必要があったんだよね…でもやらなかった。オウムの人も同じだけどね…」
元M師「今の政権に谷口さんの思想の影響があるなら大問題や。うちと同じく自滅する…」
元TD「そして、一部の人たちが知らないところで大事件を起こして、みんなが口をそろえて『知らなかった…』『まさか、そんなことを…』と言う…目に浮かぶようだね」

元M師「自民党はマジで徴兵制やりたいからね。まずは半年体験からやて。本気で止めないとマズイね!!」
元TD「でも、村井さんや井上さんたちを止められた? 彼らは『グルは絶対』『戦いは神の意思』という信念があまりにも強かったよね。そうなると聞く耳なんてもたないよ」
元TD「数千年続く天皇家が統治する日本は特別な神の国…なんて観念にとり憑かれているとしたら、オウムと同じ結末。規模が大きい分結果はもっと悲惨になるよ」
元M師「今どき教育勅語と銃剣道って、自民党・・・」
元TD「オウムの富士山総本部を閉鎖するとき、掃除してたら、たくさん銃剣道の木銃が出てきて、それを見た荒木君が、『いったいなにを考えていたんでしょう…』って、唖然としてた様子が森達也さんの本にあったね」
元M師「おんなじや。狂ってるわ」

元TD「銃剣、風船爆弾、生物兵器、化学兵器、省庁制は天皇制と同じだしね。オウムが“ヴァジラヤーナ”といってやったことは旧日本軍とホントによく似てるんだよね」
元TD「末期のオウムって敗戦間際の日本みたいだった。米軍ヘリが飛んできて毒ガス攻撃されてるって逃げ回って、まるでB29の空襲と同じ」
元M師「稲田朋美防衛大臣は雑誌のインタビューで男性だけでなく女性も全員(!)自衛隊で体験すべきと言ったのを国会で追及されてたね」
元M師「戦争ごっこしたい人と真剣に天皇や谷口教祖に帰依してる人たちがこの国を支配しているのは、マズイよ…」
元TD「オウムは別に意識して大日本帝国のマネをしていたわけじゃない。日本人に共通の深層意識、集合無意識のパターン(元型)にはまっていたんだと思う。元型にとり憑かれていたと言った方がいいかな…」(2)
元TD「今、権力の中枢に近い日本会議に、同じようなことになっている人たちがいるのかも。あの籠池さんだって、真剣で、善意で、日本を救おうとしているという点では、オウムの人と同じだよ…」

私は、長年オウム事件について考えてきたこと、集団心理、深層心理、元型の影響力について、短いメッセージなんかで説明することはできないな…そう思いました。

(1)谷口雅春著『生命の実相』第16巻(神道・経済生活編)光明思想普及会1941年。p246-247。
(2)元型(アーキタイプ)は、ユング心理学で集合的無意識に存在する力動作用とされる。元型が心に作用すると、パターン化された「イメージ」または「像」があらわれる。オウムでいう「コーザル(超潜在意識)のデータ」と類似の概念。また、元型はシンクロニシティ(共時性)を引き起こす。
末期のオウムは大日本帝国や日本赤軍、あるいはヒトラーのナチス・ドイツに似ているといわれることがある。オウムが現実にそれらから影響を受けたというより、時代と国、規模は違ってはいても、人の意識の深層にある同じ元型の影響によって、よく似たイメージが見られ、同じような運命を歩んだ、と考えるのが合理的ではないか。


それにしても、最近の世界のニュースを見ていると、VXガスを使った金正男氏暗殺、アサド政権のサリン使用疑惑、ロシアの地下鉄テロ、人混みにトラックで突っ込むテロも頻発(オウムには「熊本県警にトラックで突っ込むぞ!」と叫んだ教祖を、上祐氏が止めたという話がある)。それぞれの事件はオウムとはなんの関連もありませんが、まるでオウム事件が世界に拡散したような奇妙な感覚をおぼえます。



2017年04月11日

コメント

No title

 「集団心理、深層心理、元型の影響力」といったものに関心があり、今回の記事も興味深く読ませていただきました。特に元TD師さんのように特殊な宗教的修行によって自ら深い意識の領域を経験された方の発言は、私にはとても貴重に思います。
 
 以前ヒトラー、ナチスドイツについて調べた時に、人間の無意識層にある「意識」「力」といったようなものが騒動を起こすこともあるのかもな、と思いました。
 私は「ヒトラーの未来予言」「ヒトラーとロンギヌスの槍との関係」等といった話はオカルト愛好家のくだらない作り話だと思ってます。
 しかしヒトラーに関しては不思議な話があるのは事実で、ニュルンベルク裁判等でも証言があるようです。
 例えば「ヒトラーには自分の意志を投射して相手を催眠状態にする能力があった」とする当時の多くの証言。「ヒトラーには独特な思考があり、非常にしばしば来るべきものを予感した」というアルフレート・ヨードル上級大将の証言等。

 そのヒトラーに対してユングは1938年に興味深い指摘をしているのです。
「ヒトラーは真に神秘的なシャーマンの範疇に属する人間である・・・その声(自分自身の無意識)の命ずるところに従って行動する人間に似ている。我々の場合は、たとえときおり無意識が夢を通して語りかけてきたとしても、合理精神と大脳がその声に従うことを拒否する・・・が、ヒトラーはその声に耳を傾け、そして従う。真の指導者とは例外なしに導かれる人間である」
 
 一般人にとって麻原オウムの犯罪、動機はわけがわからないし、ヒトラーナチスの例えばユダヤ人に対するあれほど大規模な差別、虐殺や動機についてはいまだに諸説あり確実なことはよくわかってないようです。
 両者ともに動機、行動が合理的思考では理解することが難しく、そして両者ともに無意識層の「意識」「力」といったものに接点があったようです。
 また私は麻原とヒトラーに共通する精神性として、屈折した精神構造、強固な自我、そして強固な自我とは矛盾してるかもですが、素晴らしい、偉大である、為すべき気高い理想である、と自分が考えるものに対する強い自己献身性ではとも思ってます。
  • | 2017-04-12 | カルマ URL [ 編集 ]

祈りの力  意識格

何かを観想する、お祈りをする。それを通じて相手の行動、思考に同調する。
これは確かに大きな力があります。
  • | 2017-04-13 | 三橋 URL [ 編集 ]

Re: No title

カルマさん、お久しぶりです。

>  「集団心理、深層心理、元型の影響力」といったものに関心があり、今回の記事も興味深く読ませていただきました。特に元TD師さんのように特殊な宗教的修行によって自ら深い意識の領域を経験された方の発言は、私にはとても貴重に思います。

ありがとうございます。私はオウムで編集部にいたことがあるので、体験談を聞いたり読んだりする機会が多くありました。ここに書いたような体験をした人はオウムにはたくさんいましたよ。みんな修行者なのでそれを書いたり公表したりしませんが。
 
>  そのヒトラーに対してユングは1938年に興味深い指摘をしているのです。
> 「ヒトラーは真に神秘的なシャーマンの範疇に属する人間である・・・その声(自分自身の無意識)の命ずるところに従って行動する人間に似ている。我々の場合は、たとえときおり無意識が夢を通して語りかけてきたとしても、合理精神と大脳がその声に従うことを拒否する・・・が、ヒトラーはその声に耳を傾け、そして従う。真の指導者とは例外なしに導かれる人間である」

なるほど興味深いですね。教祖も間違いなく「導かれる人間」でした。
ヒトラーについて教祖は、ノストラダムスの予言解読のとき次のように言っています。
「ヒトラーが自分の運命に対して、全く抵抗できず、そして第二次世界大戦の中心的な位置に据えられ、そして悪名だけを着せられて去っていかなきゃならなかったカルマ、これと、わたしのカルマというものは、ひょっとしたら似てるのかもしれないな、という印象があります。いずれにしろ、どのような形にしろ、一応ヒトラーと違い、神々と同じ名前に、一応、並べられている、という点を考えると、まあ、その面は少し幸せであると。」(1993年1月)
 
>  また私は麻原とヒトラーに共通する精神性として、屈折した精神構造、強固な自我、そして強固な自我とは矛盾してるかもですが、素晴らしい、偉大である、為すべき気高い理想である、と自分が考えるものに対する強い自己献身性ではとも思ってます。

教祖についていえば、「屈折した精神構造」というところ以外は同感です。屈折した、歪んだ、ということを教祖から感じたことがないのです。もちろん私の個人的な感覚ですが。
私から見ると教祖は「つよい」「あかるい」「あっけらかん」「素」でありながら、強固な自我…というのかな。矛盾しますけどね。教祖から精神的な屈折を感じたことはありませんでした。ここは一般に受け入れられないところでしょうが。

  • | 2017-04-14 | 元TD URL [ 編集 ]
      

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する